昨年、アトラシアンはアジャイル開発についての「ふりかえり」を、英語圏を中心に行いました。主にTwitterを通して集まった現場の声を元にまとめたレポートから、その経緯とポイントを日本語化したものをここに掲載します。元の記事はこちらでご覧いただけます。
製品を改善しようとするとき、私たちはまず、顧客と話をして改善点を探ります。では、プロセスを改善するためには、どこから取り掛かればよいのでしょうか?さらに、その上をいくメソドロジーを改善するにはどうすればよいのでしょうか?もし、そのメソドロジーが何百万人もの人によってさまざまなやり方で行われていたら?
アジャイル開発の現状を見極めるにあたり、私たちにはこのような疑問が湧き上がりました。確かに、アジャイルは極めて人気の高い開発手法です。でも実際にどれだけの効果を発揮しているのでしょうか?また、どのように改善できるでしょうか?そこで私たちは、プロダクトマネージャーが行うように、アジャイルを実践している方々とのコミュニケーションから始めることにしました。こうして誕生したのが #RetroOnAgile でした。#RetroOnAgileは、アジャイルの現場での体験談、またこれからの展望を、世界中の誰もがオープンに語る場です。
まず出向いたのは、世界最大のテクノロジーカンファレンスである「Web Summit」。熱気にあふれる会場では750名を超えるアジャイルの実践者と話をし、何千にものぼる回答を得ることができました。その後、Twitterを使って対象を世界中へと広げ、アジャイル手法の体験談を募集しました。膨大なフィードバックを2か月にわたり精査した結果を、ここで共有します。過去と現在を正しく理解することは、将来的に成長するための糧になります。#RetroOnAgileを通して、アジャイルが今までどのように使われてきたか、現在どのような状況や傾向にあるのかを見てみましょう。
1.「万能のソリューション」を信ずるべからず
カンファレンスや会議の場でアジャイルの実践者と話をするとすぐに、「スクラム」や「カンバン」を使っているという話になります。しかし話を続けると、実際にはそれぞれのケースに合わせた独自のプロセス、ツール、アイデアを取り入れていたり、もしくはあえて一部は採用していないというケースがほとんどです。事実、#RetroOnAgileで得た回答のうちの92%が、アジャイルの実践は「マニュアル通り」ではなく、チームのニーズに合わせてカスタマイズしていると答えています。いわゆる「スクラム」を導入していると言う一方で、実際の現場で実行されている手順との間にはギャップがあり、そこに「方式の落とし穴」が存在するのです。特にアジャイルの初心者は、アジャイル開発を成功させるには、スクラムとカンバンという2つの方式のどちらかを選ぶ必要があり、あとは選んだ方式で定められているルールやプロセスに従っていれば大丈夫だと思ってしまう傾向にあります。これは、Jira Softwareなどのアジャイルのためのツールを使用する場合でも同じです。ツール上でアジャイルボードを設定する際、スクラム、もしくはカンバンの二つの方式オプションしか表示されず、先へ進むにはそのどちらかを選択しなければならない仕様となっています。
こうした現状に対応するため、Jiraの開発チームはボード全体のエクスペリエンスを再設計・評価し、新たなボード「次世代ボード」を開発しました。このボードでは、スクラムやカンバンの二択ではなく、ユーザーあるいはチームがボードを自由にセッティングできるようになっています。チームは素早く柔軟に、自分たちのニーズに合ったアジャイルプロセスを設定することができます。
2. チームとして動く
いくら優秀な人たちを集めても、 「チーム力」がなければ成果は期待できません。 #RetroOnAgileによる回答のうち68%が、チームのポジティブな活気が、アジャイル開発を実践するチームの成功にとって一番大切な要素だと答えています。
「チーム力」の掟:
- すべてのタスクにおいて、チームメンバー全員が100%のベストを尽くしていると信じること
- 計画通りに進まない場合は、積極的なフィードバックを心がけ、心を開いて話し合うことで透明性を高めること
- 常に柔軟な姿勢で、時には忍耐強く前へ進むこと。他のメンバーへの敬意を忘れず、自分がそうされたいと望む対応を心がけること。
- 時には面白い猫の画像を見せたり冗談を言い合ったりして、ユーモアの精神を忘れないこと。ユーモアは、信頼を築きます!
3.「透明性」は「成功のカギ」
チームにとって、何事もオープンに保つ「透明性」がとても大事だと考える回答者が多くみられます。自分たちのチームの「透明性」がもっと高かったらよいのに、という回答も見られます。そもそも、チームの「透明性」とは実際どのようなものでしょうか?チームメンバーの予定表を「一般公開」することで透明性を図るチームもあります。それぞれが担当するタスクの情報を共有し、オープンで率直なフィードバックを実行することが「透明性」の実現に重要だと考えるチームもあります。また、タスクが予定通りに進んでいないとしても現状のステータスをありのままに共有することが「透明性」だという意見もあります。
私たちが#RetroOnAgileで収集した回答によると、透明性のあるアジャイルプロセスは、
- チーム全員が互いに関連するタスクの状況をチェックできるように単一のカンバンボードを使用する
- ふりかえりを行い、レビューによって良い点や悪い点、うまくいっていないと思うところなど、それぞれ率直な意見を挙げて共有し改善を図る
というシンプルな形で実現していました。これらのアイデアは、一見簡単に聞こえますが、実際皆さんのチームは果たしてこの2点を実行できているでしょうか?
4. アジャイルツール vs アジャイルプラクティス
アジャイル開発で採用されるNo.1のツールとして、多くのチームからアトラシアン製品が挙がることは、私たちにとって非常に嬉しいことです。ただここで注目したいのは、「アジャイルをどのように実践していますか?」という質問に対し、導入したツールが回答として返ってくるという事実です。もちろん、すべての回答は敬意と感謝をもってお受けしています。それを踏まえても、「アジャイル = ツール」となってしまうのは問題であり、そこは変える必要があると、私たちは考えています。
「これがJiraというツールで、これを使えばアジャイルを実践できます」と上司やチームメンバーに言われて、初めて「アジャイル」を知ったという人たちは多くいるようです。また、アジャイルの実践において困ったことはないかと尋ねると、Jiraの機能についてのコメントが返ってくることが多々あります。このように、機能性ありきのアジャイル開発向けツールに対する捉え方は、視野そのものも狭くしてしまいます。私たちは、皆さんがアジャイルの基本的な考え方をより柔軟に活用し、自分たちのニーズに合わせてツールを変えてゆく社会を目指しています。現状ではまだ、自らのアジャイル実践法をツールの型にはめてしまう傾向があるのではないでしょうか。
5. オープンな「情報共有」が未来への扉を開く
アジャイルの実践について、自分たちの体験談を共有する動きは始まっていますが、幅広く浸透するには至っていません。#RetroOnAgileによると、アジャイルコーチやメンバーたちは、その実践内容をあまりオープンにしないという傾向が見られます。実際私たちも、回答やフィードバックを得るためには、さまざまな工夫が必要でした。情報を共有したがらないという、意外な壁がありました。ソフトウェア開発はオープンソースのコードや、アイデアの自由なやりとりにより成り立っています。アジャイルでも同じではないでしょうか?当初、アジャイルというコンセプトは大々的に広く共有されていましたが、今はそれから大分変わった状況となっているようです。
私たちが行ったTwitterによるアンケートでは、自分のチームがオープンであると考えている人は55%のみです。アジャイルの実践内容を社外秘とすることが競合他社に対して有利であると考えられているのか、または、アジャイルコーチが知識や経験は顧客とのみ共有すべきという考え方を持っているからかもしれません。いずれにせよ、この状況は変えてゆく必要があります。
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以上が、昨年行った#RetroOnAgile(アジャイル開発についての「ふりかえり」)からの5つのポイントとなります。英語となりますが、こちらのページでは、この「ふりかえり」の全容をご覧いただけます。また、本ポストの元となった記事では、Twitterで行ったアンケートの結果や、実際の参加者の声も載せていますので、ぜひご覧ください。
なお、上記5つのポイントをクリアされていチームで、もしまだJira Softwareをお使いでなければ、ぜひ一度、7日間無料トライアルをお試しください。アジャイル開発との親和性の良さを感じていただけるはずです。