先日ご案内したとおり、弊社のアジャイルエバンジェリスト Nicholas Muldoon が先月、来日いたしました。おかげさまでどのイベントも盛況となり、多くの皆様とお話しをさせて頂くことができました。
そのイベントのうちの一つ、10月20日(土)に品川シーサイド楽天タワーにて開催された Rakuten Technology Conference 2012 における Nicholas のセッション「Agile and Innovation: Hand-in-Hand at Atlassian」(アジャイルとイノベーション) をビデオにおさめました。参加された方も参加できなかった方もぜひご覧ください。
ビデオ
日本語字幕を付けましたのでご利用ください。
スライド
すぐに内容をご覧になれるよう、ビデオの一部を文字におこしました。長くなるので2回に分けてご紹介します。今回は前編「アジャイル編」です。どうぞご覧ください!
アトラシアンは製品チーム向けコラボレーションソフトを作っている。現在550人以上の社員が世界中にいる。シドニー、サンフランシスコ、アムステルダムなどにオフィスがある。
アトラシアンJIRAの由来をご存知ですか? 2002年バグトラッカーJIRAを作り始めた時、最初はゴジラと呼んでいた。
私はニコラス・マルドゥーン。アトラシアンのアジャイルエバンジェリスト。世界中のアトラシアン顧客をもっとアジャイルにすることが役目。
2007年にアトラシアンに入社し、エバンジェリストの前は、GreenHopperのプロダクトマネージャーだった。
私たちの顧客が価値を、彼らの顧客へ早く届けられるよう支援する。
今日はアジャイルとイノベーションの話をする。
それらを活用して得られる利点が2つある。
1.幸せな顧客
2.成功して成長しているビジネス
アトラシアンでは過去10年、アジャイルとイノベーションに様々なアプローチを試みた。特に好きな2つを紹介する。
アジャイルの部分からは「顧客フィードバック」。
イノベーションの部分からは「ShipIt Days」。
この2つは世界中のどの会社でも取り入れられる。
2002年、アトラシアン創立時、バックログを公開すると決めた。北米やヨーロッパの顧客が直接バグ報告できるように。
シドニーの小さいチームが世界中にスケールする方法が必要だったから。
いくつか懸念があった。顧客が多くのバグを見て品質に疑問を持たないか。バックログを見た競合他社に市場で出しぬかれないか。実際に起こったのは、顧客がとても満足したということ。
顧客は直接開発チームと会話ができ、私たちも顧客と直接会話ができた。
デベロッパー・オン・サポート(DOS)。
成長するにつれ、サポートエンジニアが必要になった。2週間毎に各製品チームから1人のデベロッパーがサポートローテーションに入る。
サポートローテーションに入ったデベロッパーが最もやりたくないことは、次の3ヶ月で同じ問題に対面すること。チームに戻って問題を共有する。
次に製品マネジメントを導入。この時には創業者は忙しく、すでに顧客の声を反映できなくなっていた。製品マネジメントが顧客との会話やバックログを担当。製品ビジョンを成長させ続けた。
2008年、私を含む製品マネジメントチームはイノベーションゲームを開始。「Innovation Games」は Enthiosys 社の Luke Hohmann の著書。
「1対1」から「1対多」へ顧客フィードバックをスケールさせるのに役立った。
参加者に偽物のお金を渡し、もっとも重要な機能、製品から取り除いて欲しい機能にお金を使うように言う。
これはイノベーションのためではなく、顧客による検証、顧客フィードバックのためのもの。
顧客数が増えるに従い、数千といった単位でフィードバックを得る必要があり「課題コレクター」を開発した。世界中からフィードバックを収集し新バージョンの方向性を確認するため。
2011年3月、GreenHopper チームは技術的な理由によりコードを書き直すことを決めた。課題コレクターを使い世界中の数千の顧客からフィードバックを集めようとした。
フィードバックを送れるよう画面上部にボタンをつけた。「素晴らしい」「ひどい」など点数がつけられる。
公開バックログでは「1対多」、D.O.Sでは「1対1」、イノベーションゲームでは「1対何人か」だったが、課題コレクターでは「1対数千」でフィードバックが集められる。
毎朝8時にGreenHopperチームは過去24時間のフィードバックを見る。製品を改善するモチベーションになった。
2011年、ベータテストにて2〜300の顧客がフィードバックを提供。2012年には、数千のフィードバック。
今年8月、「GreenHopper 6」をテキサス州ダラスで開催された「Agile 2012」でリリースしたが成功する自信があった。「素晴らしい」というフィードバックを多く得られていたから。
「TeamCalendars」という全く新しい製品開発を始めた。2011年6月のユーザーカンファレンスという、ローンチの締切があった。2011年2月に社内、社外から顧客フィードバックの収集を開始した。
ローンチしてから12ヶ月で1,500社に販売という成功をおさめた。顧客フィードバックを活用して製品開発チームに力を与えることができた。
Eric Ries著「Lean Startup (邦題:リーン・スタートアップ)」とSteve Blank著「The Four Steps to the Epiphany (邦題:アントレプレナーの教科書)」はアトラシアンの製品開発に大きなインスピレーションを与えている。顧客フィードバックプログラムを見ると「Build – Measure – Learnサイクル」を参考にしていることが分かるはず。
アイデアがある時、顧客がどう思うかが分かるのにただ十分なものを作る。質的、量的な側面から顧客フィードバックを得て、サイクルのループを継続させる。
顧客フィードバックについて重要なポイントは、より多くの価値を、より頻繁に、より正確に、顧客に届けることができる点。
うまくいくだろうという「希望」で、全顧客に機能をリリースすることはもうやめよう。
顧客フィードバックはアトラシアンのリスク因子を完全に変えた。製品や機能をローンチする時、それが顧客の問題を解決することを本当に分かっている。
もし顧客の問題を解決しないならばそれはムダなのでエネルギーは費やさない。
顧客フィードバックを迅速な意思決定に活用している。
後編:イノベーション編に続く。