アトラシアンの1年で最大の基幹イベント “Atlassian Summit”。今年は4/2-3の2日間で、初めてリモートでの開催となりました。先日はDay.1のKeynoteのまとめをお伝えしましたが、本ブログではDay.2のKeynoteの前半部分で発表された内容についてお伝えします。
Day.2のKeynoteは、アトラシアン共同創設者兼共同CEOのマイク・キャノン・ブルックによる「自宅からお届けしているので、途中で子供が部屋に入ってきたらごめんなさい」というアイスブレイクとともに幕開け。そして最初に社員、パートナー様、お客様から成るアトラシアン コミュニティ全体に感謝を述べ、全ての人々の安全と幸せを祈念しました。また、このウィルスを取り巻く状況に関する先行きは不透明だが、新しいテクノロジーやサービス、そして新しい働き方が出現してくることは確実だとして、友人と映画をみている感覚を共有できるNetflixのサービスや、飲食店や書店等のテイクアウトやデリバリーへのビジネスモデルシフトについて、またアトラシアンのお客様でもあるスタンフォード大学が春学期を完全にオンライン授業に切り替えたことなど、この数週間で既に見られた変化を例にとり、私たちは今まさに新たなトランスフォーメーション元年の始まりにいることを説明しました。
クラウド化が更に加速
この先チームやビジネスが生き残るためには「新たな常態」を受け入れる必要がある、とマイクは強調します。50年以上前に始まったメインフレーム誕生を契機とする変革の再編だとも示唆。変革の歴史を振り返り、現在のクラウド化の加速への流れを改めて話します。メインフレームやPC誕生の後、ブロードバンドインターネットとモバイルコンピューティングが発達し、あらゆる業界の難題を解決していく変革の嵐が生まれました。そしてそれら多くの情報を全て保管し、人々が常に活用できる状態を生み出すために、クラウドが登場。今やデジタル時代を牽引する必要不可欠なものとなっています。
更に、今やあらゆる人や物がオンラインで繋がり、様々なビジネスが展開されている現状に触れ、多くの企業でクラウドコンピューティング関連施策に最も大きなIT投資がなされていると言います。そしてその企業のクラウド化を加速させているのはSaaSであると強調しました。驚くべきことに65%の組織がSaaSが事業を牽引していると自認していて、従業員あたりのSaaSアプリケーションの利用数も平均9.5とあらゆるチームにおいて広く利用されていることが伺えます。
そして、アトラシアンの90%以上のお客様もクラウドで製品の利用を開始している実態や、1日あたり100億ものリクエストがアトラシアンのクラウド製品に対して届いていることも紹介。リテールビジネスにおいて全く新たなサービスを提供するスティッチ・フィックスや製薬会社のアストラゼネガ、エンターテイメント業界のソニー・ピクチャーズ、そしてキャッシュレス社会を牽引するVisaなど様々な業界においてアトラシアンのクラウド製品がビジネスを牽引している事例を伝えました。マイクは、クラウドへ引き続き最大の投資を続け、お客様に24時間365日コアとなる戦略に集中しイノベーションを起こし続けてもらえるようにすること、そして、クラウド製品でベストなアトラシアン製品の体験を提供していくことを約束しました。
最後に、改めて今回のリモートサミットへ参加いただいている視聴者の皆様、この激動の変化にあたり適応し奮闘し続ける全てのアトラシアンの関係者(ファミリー)へ感謝を伝え、来年のサミットではラスベガスで再会できることを願って、次のスピーカーである、Intuit(イントゥイット)のCEO、ササン・グダルジさんへバドンを渡します。(2021年のアトラシアンサミットの日程:4/20-22)
お客様事例 ー 先進的にクラウド化を実現し市場のリーダーに
次のセッションでは、アメリカで圧倒的なシェアを持つ会計・税務ソフトウェア・クラウドサービス企業であるIntuit。そのCEOであるササンが、Intuitがクラウドを基盤とするグローバル企業へ変革を遂げたきっかけとその過程で学んだことについて、Intuitの広報担当サラ・ピーターソンさんとの対話形式で話します。
Intuitの歴史とクラウド化への道のり
まず、Intuitのビジネスについて。1983年、設立者のスコット・クックが自身の妻がキッチンで家計簿での管理に手間取っているのを見て、今より良い方法が必ずあるはずだと確信し、初めての製品 “Quicken” を開発したのがIntuitの始まりです。そこから、数々の製品を生み出し、今では世界で5千万以上の一般消費者から個人事業主、また中小企業の顧客を抱え、年間70億ドルを売り上げるまでに成長。その中でクラウドの売り上げは40億ドルにまで上ると言います。ここまでの成長を遂げることができたのは、幾度となく自己破壊と自己再構築を繰り返しながら、顧客の問題に真に向き合うことで変革への勇気をもらうことができたためだと伝えました。
そして最大の変革の1つである、クラウド化について語ります。振り返ると、2012年ごろにソーシャルメディア、モバイル、クラウドが台頭し、顧客のニーズが大きく変わり、ビジネスを行ったり税金の処理をしたり、会計管理をするのを、どんな媒体からでも、いつでも世界のどこにいてもできるようにしたいというニーズが生まれたとのこと。そして、それまではうまくいっていたビジネスも、うまくそれらのニーズに合わせて適応していかないと失敗へと陥ってしまうような以下の4つのトレンドが登場したと言います。
- ソーシャルメディアが人々と製品との関わり方を変革
- クラウドによって、世界は国境のないグローバルなフィールドとなり、アメリカ市場へも世界の競合他社が襲来
- モバイルファースト、モバイルオンリーな世界へのシフト
- 次世代への変革の源となる信頼できるデータの価値向上
しかし、この変革は非常にタフで企業のDNAを変えていくような必要があったと強調。そんな中で最初に行ったのは、企業全体でどのような変革が必要なのか、そしてその方向性を組織全体で同じ認識を浸透させることだったと言います。具体的には、単一の製品を提供するプロダクトカンパニーから様々な製品と競争そして連携し、顧客に最適なソリューションを提供できるようなプラットフォームカンパニーへの変革。さらには、データを的確に利用して、顧客のユーザー体験(UX)を高めることにフォーカスしたとのことです。これらをトップダウン方式で実施し、組織のメンバーの気持ちも考慮しながら全体を統括して進めていったと語ります。代表的な変革のポイントは以下。
- カンパニーバリュー:サイロ化された組織から1つの統一されたプラットフォームを提供する組織へ
- 戦略:他社との連携可能なオープンプラットフォームの提供。コードベースモデルをよりモダンなものにし、APIを用いた複合化可能なサービス(Everything as a Service)提供
- 製品群:創業当初に開発した製品を、戦略的ゴールの変革に沿って売却
- 採用強化:変革をリードする人材を厳選して採用
結果として、以前は北米でデスクトップ製品を販売する企業だったのが、今ではグローバルに製品プラットフォームを提供する企業へ飛躍。現在はプラットフォーム製品の売り上げが全体の半分以上を占めていると言います。今後はAI駆動のエキスパートプラットフォームへとなるべく、次の変革を見据えていると将来の展望を示唆しました。
アトラシアン製品の役割
ササンは、この飛躍的なビジネストランスフォーメーションの背景でアトラシアン製品がグローバルに分散されたチームの生産性を向上させ、重要な役割を担っていると話します。
Jiraは様々な側面で製品開発に寄与しており、ユーザーストーリーやインシデントレポートのトラッキング(自動化)で生産性を可視化するなどし、エンドツーエンドでチームの効率化を支援。Confluenceは、アイデアや、エンジニアリングおよびビジネスプロセスに関するドキュメントなど、様々な情報のメインの保管場所として活用し、コラボレーションのコアとなっていると話します。アトラシアン製品は、ビジネスクリティカルで製品開発のオペレーションにおいて欠かせないものとなっていると力説しました。
トランスフォーメーションを見据える組織へのアドバイス
まず、これからクラウドへ移行するということは、すでに遅れをとっているのだと指摘します。そして、クラウド化によって失うかも知れないことのリスクより、移行のメリットを受け入れるべきだと言います。さらに具体的に3つのアドバイスを送ります。まずは変化を機会と捉えること。簡単なことではないし、組織のメンバーに新たな力をつけてもらう必要があるが、未来に備えるためにはとても大事なことだと強調します。2つ目は、変革においても変わらない部分を明確にし、最終的な将来の姿を組織全体で共通認識を持つこと。そしてなぜそれをするのかを全体で理解することが大切だと続けます。最後に、最も基本的なこととして、常に顧客の課題解決に集中すること。自社製品ではなく、顧客の課題に注力することで、新たな革新的な発見があったり、変化を受け容れることができるようになると伝えました。
危機の時代に大切なこと
ササンは自身のセッションの最後に、今のような予測不可能な時代の過ごし方について視聴者へ助言しました。一番大切なのは、もちろん一人一人の健康と安全。そしてそれに加え、この不確実性の高い時期を賢く攻めの姿勢をもって活用することで、大きく前進し他との差別化を図ることができ、最高の姿に変貌を遂げることができると話します。このセッションを聞いている皆さんの中にも、この時期を有効活用して、将来を担い作っていくような人材となり、所属する組織の成長へ貢献できるはずだ、と強い言葉を送りました。
最後に、アトラシアンへ言葉を送ります。アトラシアンは素晴らしい文化を持ち、常に将来を見据えた革新的で特別な会社。これからの時代も新たな未来を共に創っていきたい、という強い言葉と共に、自身のセッションを締めくくりました。
Day.2の残りの内容については、 後日公開する”Atlassian Remote Summit 2020 – Day.2 Keynote レポート(その2)” にてお伝えします。