皆さん、こんにちは。
先日、アトラシアンでは年次イベントであるTEAM TOUR Tokyo 2022を無事開催いたしました。実に3年ぶりの対面セッションを含めたハイブリッドイベントとなり、基調講演合計3つ(オープニング2つ、クロージング1つ)を除く時間帯は5トラックに分かれ、そのうち「企業変革トラック」のみがイベント会場である東京エディション虎ノ門にて対面で実施され、残り4トラックはオンライン配信で開催されました。(基調講演は5トラック共通のセッションで、対面とリアルタイムでのオンライン視聴のハイブリッド形式。)
こちらのブログでは、筆者の独断と偏見による当イベントの見どころをまとめてみたいと思います!
その前に、IT業界の季節ネタ、2023年に向けた技術トレンド展望
このシーズンはIT業界に携わる皆様でしたらお馴染みの、年末恒例、業界調査会社各社さんが発表する2023年の技術動向トレンドなども聞こえてきています。その中で、たまたまこのような記事を見つけました。
ガートナー、2023年の「戦略的テクノロジーのトップ10」を発表
ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、ガートナー社は毎年この時期、次の年の注目トレンドとしてこのような形式での展望を公開されてます。おおもとの発表は米国でグローバル版として発表されますが、国や地域ごとの別バージョンも少し遅れて発表されます。アジア版、EMEA版などが確か以前確認できたと思います。その中の、日本版がこちらですね。これらグローバル版と日本版は大枠では同じ文脈に基づいた内容のようですが、選ばれるトピックが地域・国ごとの事情や特色に応じて若干の区分けがなされている印象です。
また、これらのトピックは抽象的なものや概念的なものが多く、現場の方々はイメージしにくいものが時々あります。が、個人的に思うに、調査会社の展望は敢えて抽象概念として理解して、それを紐解いたり自社のビジネス領域が事業領域に落とし込んで具体化していくのは実際のプレイヤー(ベンダー各社)やユーザ企業の皆様方なのかな、と思っております。
さて、そんな豆知識は置いておいて、今回の発表内容です。個人的に興味深いのは、ガートナー社が提唱する3つの大きなトレンド・カテゴリ「最適化」(Optimize)、「拡張」(Scale)、「開拓」(Pioneer)の一つ一つに、アトラシアンが目指すテーマと紐づくものが見受けられる、という点です。
以下、引用==================================================
最適化:デジタル免疫システム
デジタル免疫システムは、生物の免疫システムになぞらえてアプリケーション開発のあるべき姿を示す、ガートナー独自の概念だ。AI(人工知能)を活用した自律的なテストや外部からの攻撃などによって不具合が発生した際の自動修復などの導入を特徴とする。
具体的にはオブザーバービリティ(可観測性)やAI拡張型テスト、自動修復、カオスエンジニアリング、サイトリライアビリティエンジニアリング(SRE)、アプリのサプライチェーンセキュリティを組み合わせ、システムのレジリエンスを最適化するといったものだ。
拡張:プラットフォームエンジニアリング
プラットフォームエンジニアリングの目標は、複雑なインフラストラクチャを自動化し、開発者のエクスペリエンスを最適化することで、プロダクトチームによる顧客価値の提供スピードを迅速化させることだ。
池田氏は、「2026年までにソフトウェアエンジニアリングの実施企業の80%がプラットフォームエンジニアリングチームを結成し、そのうち75%がセルフサービス型開発者ポータルを取り入れる」と予測している。
ガートナージャパンの提言
ガートナーの池田氏は「テクノロジートレンドの全てをすぐに導入すべるきといったプレッシャーを感じる必要はない。しかし、チャレンジしなければ、これからの時代に取り残されることなる。自社のビジネスに関して、どのトレンドを優先して取り組むべきかといった戦略を示し、経営の一端を担うことがCIOの役割だ」と説明する。
引用ココまで==================================================
一点目と二点目は、弊社が先日グローバルで開発者向けの調査レポートを実施した「State of Developers Report」という報告書の中でも一部同じ傾向が見て取れました。このレポートでは日本とそれ以外の欧米各国の傾向の違いが極めて顕著に見られる、非常に示唆に富むものです。こちらについてはまた別途ご紹介する予定なのですが、アプリケーション開発部門の役割が高度化・複雑化しているのは日本を含めて世界共通のトレンドです。また、プロダクト開発の提供スピードの迅速化は、まさにアジャイル開発などの手法を取り入れる背景でも頻繁に聞こえるニーズです。
上記二点だけでも興味深いのに、記事の中で紹介されているガートナー池田氏のコメントは更に個人的には興味深いと感じました。というのも、筆者がイベントのオンサイトで拝聴したパネルディスカッションの中で特に面白いと感じたコメントそのままだったからです。
詳細はぜひアーカイブ配信をご覧いただくとして、ここでは幾つか筆者が特に印象に残った厳選した三つの名言をご紹介したいと思います。
イベントから引用する、名言三選
名言1 : 「CIOが配置されると、役員会でCIO自身が直接ITに関わる本質的な課題提起ができるようになる。」
「デジタル変革を担う情報システム部門 – ITリーダーに伝えたい、ミッション、ビジョンの描き方」より引用。
まさに前述のガートナー池田氏の言葉とリンクするのではないでしょうか。この言葉は、CIOをもっと多くの会社が配置するべきである、という文脈で出てきました。役員会で直接、最新のIT動向から自社の事業領域での課題提起に繋げ、よりデジタルを活用した意思決定に繋げる、という点で非常に重要である、という議論がパネルディスカッションで盛り上がっていました。
名言2 : 「組織カルチャーとは価値観・社風といった概念ではなく、具体的なやり方のことである。」
「オープニングキーノート2:"分断"されたピラミッド型組織からの脱却 – DXを前提とした組織づくりの勘どころ」より引用。
これはもともとは書籍「両利きの組織をつくる」(加藤雅則氏他著)からの引用との事ですが、意外な解釈だと感じました。まさしく、組織文化は概念的なものと思いがち、というのは多くの方々が感じられるのではないでしょうか。それが、実は日々の「自分の手を動かして、作業している業務」のやり方までも含まれるのが組織文化である、と。であれば、業務の進め方を社員全員が変えていけば、イコール組織文化も変わる、と明確に言えるわけですね。ふんわりとしたイメージだった組織文化というものが、具体的にどうやって変革できるか、が少しイメージ付いた気持ちになりました。
名言3 : 「冗長な文書で報告する文化だったが、Slackなどのデジタルへの置き換えで、徐々に手短でロジカルに論点を整理した内容になった。意思決定を早くするべく、変われば変わるものだなぁ、と。」
「見えない未来の舵を取る – ITと社会が融合する時代のプロダクトリーダーシップ」より引用。
これは前述の「名言2」をそのまま体現するかのようなエピソードでした。社内の報告書が長々と書かれた文書形式だった「文化」が、まさに少しずつ変わっていき、デジタルを駆使した結果、早い意思決定に繋がる「新しいやり方」に変わったわけですね。興味深いのが、この名言2と3は繋がった会話の中で出てきそうな話ですが、全く別のセッションで別の講演者の方々がお話しされた内容からの引用である、という点です。
一貫したテーマ「業務が見える、つながる、動きだす」
これらのキーワードをまとめると、一つの一貫したメッセージが文章化出来るような気がします。
「CIOがデジタルを活用した戦略を示し、本質的な課題提起を続けることによって経営の一旦を担い、組織カルチャーを変革し、日々の業務の進め方を変えていき、早い意思決定を進めて事業の推進に貢献する」
そしてその実行役には、ガートナー社の言葉を借りて言うなれば「アプリケーション開発のあるべき姿」「プロダクトチームによる顧客価値の提供スピードを迅速化」を実現したデジタルやIT部門が活躍し、オープンに全ての部門、例えばマーケティング、営業、経理などの部門が自律的に協労する、という組織の姿もイメージできてくるわけです。
その結果、会社という組織全体で「業務が見える、つながる、動きだす」 – まさに、このイベントのテーマそのもの、なんですよね。
今回のイベントを残念ながら見逃した方、または参加したけど内容を見返したい方、など早くもお問い合わせも頂いております。動画形式でのアーカイブ視聴がAtlassian TEAM TOUR Tokyo 2022イベントページよりご視聴頂けます!(これから順次公開していく予定です!)そちらで是非これらの名言三選だけでなく、学び多いセッションに触れていただければ嬉しいです!