IBM社はいかにJira Data Centerを将来の基盤構築に活用したか – 効率とアジリティを目指す企業から学ぶ

本ブログは、こちらに掲載されている英文ブログの翻訳です。万が一内容に相違がある場合は、原文が優先されます。


By Jacob Shepard
Product Marketing Manager

IBM社は、「アジャイル」がトレンドになる前からずっとアジャイルでした。過去100年以上にわたって進化と方向転換を繰り返し、今日の革新的な企業へと成長してきたのです。その過程において、同社はJira Softwareを活用して開発プロジェクトの計画、管理、追跡を行い、世界中で170ものインスタンスが作成されました。会社の成長に伴い、Jiraの利用をスケールさせるためのより良い方法を探しつつ、効率と管理を向上する必要があることに気づきました。そこで、IBM社はJiraを一元化して統合基盤を作成することを目標に掲げ、インスタンスの統合に取り掛かりました。

Jiraのインスタンスをデプロイすることは、家を建てることに似ています。強力な基盤、インフラストラクチャ、セキュリティが必要になるのに合わせて、ユーザーの要求も満たさなければなりません。IBM社は、この野心的な目標の達成に向け、Jira SoftwareをData Center版に移行することを決め、このプロジェクトは社内で「Jira@IBM」と呼ばれるようになりました。アトラシアンのData Centerは、同社が求めていた信頼性とコンプライアンス、チーム拡大の一歩先まで見越して備えるのに必要なインフラストラクチャ、そしてチームのより迅速かつスマートな業務遂行を実現する機能を提供しました。以下に、IBM社がJira Software Data Centerという新たな基盤を整え、デプロイするために使用した設計概要をご紹介します。

デプロイメントの骨組みを作る

Data Centerをデプロイするには、まずデプロイ場所を決め、強力な基盤、つまりハードウェアを構築することから始めます。デプロイ場所には、いくつかの選択肢があり、ベアメタルへのデプロイ、あるいはAWSやAzureといったIaaSベンダーを使用してデプロイすることもでき、既存の投資に合わせて選べます。最近では、そのメリットに着目し、クラウドにデプロイすることを選択するお客様が増えています。クラウドへのデプロイは、インフラストラクチャのコスト節約だけではなく、柔軟性を高め、変化への迅速な対応が可能になる点も非常に重要です。頻繁に再構築する必要がないよう、組織の成長と共に拡大・拡張できるコンポーネントを選択することを強くお勧めします。

IBM社は、高性能インフラストラクチャを求めて、IBM CloudソリューションをJira Software Data Centerのデプロイ先としました。急速な成長を見込んでいたため、最高クラスのCPUを搭載したベアメタルサーバー、大量のメモリ、信頼性の高いRAID 10構成を使用した超高速SSDなど、最適なスケーリングパフォーマンスを実現するソリューションを採用しました。以下は、インフラストラクチャ デザインの一部です。

スマートなインフラストラクチャに向けた基盤を準備する

現代の多くの住宅所有者にとって、防犯や自動化は当たり前になっています。冷暖房設備でもブロードバンドでも、すべてをスムーズに作動させるための、さまざまなソリューションが用意されています。何か問題が起きた場合は、すぐにアラートが発せられます。Jira Software Data Centerのデプロイも同様です。重要なアプリケーションには、監視方法やトラフィックフローの経路、データ管理の方法などについて、強固な基盤の構築が不可欠です。そうすることで、インシデントに対応できるようになるだけではなく、計画的にインシデントを防ぐことができ、その実現には、さまざまな方法があります。

IBM社は、戦略に沿ったソリューションを監視ツールとインシデント管理ツールに採用し、これらを組み合わせて、あらゆる問題に対してただちにアラートがあがるようにしました。また、インシデント管理ツールをSlackとリンクさせ、重大な案件の場合には対策部屋を立ち上げ、必要に応じてより幅広いメンバーに迅速かつ簡単に通知できる方法を確立しました。

資産を保護する

住宅において、正面玄関を施錠するだけで良い時代は終わりました。現在、ホームセキュリティ業界ではアラーム、人感センサー、セキュリティカメラなどの製品が普及しています。これらはすべてスマートフォンに接続され、物理的な安全だけでなく、安心感も約束してくれます。これと同様に、セキュリティはアプリケーションの可用性、健全性、長期耐用に不可欠です。情報漏えい対策だけでは完璧とは言えません。万全なセキュリティ対策とは、悪意のある人物による作業の中断、重要なアプリケーションや情報へのアクセスを防ぎ、チームの生産性を維持することです。

IBM社では、HTTPSでエンドツーエンドの暗号化をしているノードを含め、すべてのサーバーでファイアウォールを使用しています。総当たり攻撃のリスクを最小化してサーバーアクセスを保護するため、サーバー認証にSSHを使用し、ルート管理者とパスワードベースの認証を無効にしました。また、安全性の高いプライベートVLANを使用し、パブリックアクセスからノードを隔離しました。そのため、ユーザーがログインするには、安全なIBM CloudのVPNに接続する必要があります。同社はこれらのセキュリティ対策を実装した後も、高パフォーマンスが維持されていることを確認するために繰り返しテストを行いました。

インスタンスをカスタマイズする

新居が引っ越せる状態になったら、家電製品店を訪れ、好みの製品を揃えるはずです。Jira Software Data Centerのデプロイにおいてカスタマイズする場合には、Atlassian Marketplaceを訪れましょう。Atlassian Marketplaceでは、管理者からエンドユーザーまで、チームメンバーのニーズに合わせてアトラシアン製品をカスタマイズするための、さまざまなアプリを購入できます。IBM社はMarketplaceのアプリを使用することで、わずか2か月でカスタマイズを完了し、稼働を開始できました。

また、SSOプロバイダーを使用して、ジャストインタイムのプロビジョニングを提供することで、サインインのエクスペリエンスを簡素化、そして改善しました。Jiraにログインしたユーザーは、権限作成やプロジェクト作成用のアプリにより、ガバナンスのフレームワーク内に留まりながらもニーズに沿ったテンプレートを柔軟に選択できます。これにより、ワークフローやスキームの重複が原因でインスタンスが大きくなりすぎるのを防ぐことができます。さらに、エンドユーザーとのコミュニケーションを改善するため、IBM社はさまざまなアプリを使用して、プロンプトやバナー、さらには利用規約などを通じてユーザーに情報提供できるようにしました。

成功に向けた計画を練る

Jira Software Data Centerのデプロイに焦点を絞ったアプローチを実行することによって、99.9%の稼働率と、合理化された拡張性と可用性の高いエクスペリエンスを実現できます。そして、IBM社は毎週1,000人のユーザーを追加しながらも、99.9%の稼働率を一貫して維持しています。

この成果について、少し考えてみましょう。約50万人の従業員と契約社員を抱える、小さな国程度の規模を持つIBM社は、Jira Software Data Centerを使用した計画的なアプローチを通じて、管理の一元化を実現しました。世界規模で効率を上げ、従業員がより速くアジャイルに動くことができ、そして従業員にとって再重要事項である業務に集中できる環境を整えました。Jira@IBMプロジェクトは今、成功の指針となっており、独立した独自のインスタンスを必要とするビジネスニーズを抱えるチームがそのプロセスに追随しています。

テクノロジーの先を考える

この成功の背景には、チームがいることを忘れてはいけません。環境の開発は、ハードウェアやソフトウェアだけの問題ではなく、人やプラクティスも重要な役割を果たします。IBM社のJiraチームは、実際は非常にリーンで、優秀な人材、プラクティス、ツールを組み合わせたからこそ、このプロジェクトを実現できたのです。

将来的にデプロイを検討しているチームにとって、重要なポイントをまとめます。

  1. 将来に備えて計画を立て、常に方向転換に備える – 変化は不可避であるという先見の明を忘れずに、構築を進めながら、常に変更管理プロセスに従いましょう。
  2. スケーラビリティを考慮して構築する – 構築後にもユーザーは増えることを前提に進めましょう。成長を念頭に置いてインフラストラクチャを構築し、スマートに拡張します。
  3. 「ユーザーファースト」のマインドセットを持ちつつ、ガバナンスを維持する – エンドユーザーのために構築することは重要ですが、カスタマイズしすぎてブラックホールに陥ってしまってはいけません。管理制御を維持し、標準を採用し、テンプレートを活用しましょう。
  4. ドキュメント化も忘れずに – 計画の始めから操作指示書を作成し、すべてを文書化しましょう。これにより、オンボーディングの改善、自動化の機会の特定などが可能になります。
  5. 利用可能なすべてのリソースを活用しましょう – デプロイ作業に役立つ多くのリソースをご用意しています。有料オプションであるアトラシアンのTAM (テクニカルアカウントマネジメント。IBMプロジェクトでは、Ali Bagheriが TAM として活躍しました!) サービスをはじめ、コミュニティのような無料オプションまで、幅広いリソースをご活用ください。

なお、アトラシアンでは、エンタープライズ向けのさまざまなサービスを用意しています。詳細は下記リンクからご覧ください。