【Team’22】注目の新製品・新機能・アップデートまとめ

自律と協働の時代に合わせた新しい働き方を支援するアトラシアン製品とその方向性

4月5日から7日の3日間にわたって開催された、アトラシアン最大のイベント「Team'22」。今年は3年ぶりにラスベガスでのライブ開催とオンライン配信のハイブリッド型で展開されました。

この記事では、日本時間の4月6日深夜に実施された4本の基調講演のうち「Culture eats strategy for breakfast」と題されたオープニングキーノートの内容から、アトラシアンの最新アップデート情報を中心にまとめをお伝えしたいと思います。

今年の主要テーマは Work differently, together

開演と共に舞台に登場したのはアトラシアンの共同創業者兼共同最高経営責任者のスコット。2年前に世界の変化を実感した時からアトラシアンが取り組んできた新しい働き方について話すことからはじまりました。Team Anywhereは従業員がどこでどのように働くかを選択できる新しい働き方に関する取り組みです。コロナ以前はほとんどの社員が世界の10数箇所の拠点で働いていましたが、今現在、25%以上の社員がオフィスから2時間以上離れた場所に暮らし、その割合は昨年入社した社員に限ると47%にまで上ります。同じく新しい働き方を模索するみなさんにとって、アトラシアンの製品や実践知がこれほどまでに現実問題に直結したことはなかったのではないでしょうか。講演のタイトルにもなっている有名なドラッカーの言葉「企業文化は戦略に勝る」を引用しつつ、いま組織が直面している変化のスピードと驚異的な逆境の中で、組織の明暗を分けるのは文化であり、ハイパフォーマンスなチームに共通しているのは、個人やチームに即興や革新性、創造性を発揮させる自治権を十分に与えつつも、企業全体として統制がとれている自律型と統制型のハイブリッドな文化を持った組織だといいます。しかしそれはどんな組織にとっても容易に実現できることではありません。スピードが速く、高度に相互依存した現代社会では、複数のチームが一丸となって取り組まないと解決できない課題ばかりであるにも関わらず、チーム毎に仕事のやり方や業務の管理手法、使っているツールがバラバラなために組織横断で統制を取るのは難しい課題です。

今回のTeam'22では「異なるチームが異なる方法で異なるツールを使って仕事をしている」現状に対して、ツールの統一を促す代わりに、個人やチームに十分な自治権を与えながらも統制の取れた自律的な協働、つまり「Work differently, together(異なる方法で、一緒に働く)」を実現する目的のもと開発された新製品とアトラシアンクラウド製品に共通のプラットフォームにおける機能アップデートが紹介されました。

自律型と統制型のハイブリッド組織文化を育む新製品

チームが一丸となって働くためには、取り組む仕事に関するWhat、Why、Who、Howに関する共通の理解が必要です。単純な質問に思えますが、聞くべき人や見るべき場所が分からなければ、簡単に答えが得られるものではありません。このようなニーズを満たすために開発された2つの新製品がアトラシアン製品ファミリーに加わります。

Atlas

Atlas(アトラス)は、アトラシアンのワークマネージメントツール群に加わる最新製品で、チームの関わる作業に関する総覧のような位置付けの製品です。チームの関わるプロジェクトや作業に関するWhat(何を)、Why(なぜ)、Who(誰が)やっていて、How(どうなっているのか)を明確にし、組織を横断したオープンな共有を促進します。

SNS感覚で作業状況のダイジェストを全角140文字/半角280文字以内で週次に投稿することができ、該当のプロジェクトをフォローしているユーザーは、Atlasのフィード内で投稿を確認してリアクションやコメントする他、メールやSlackまたはMicrosoft Teamsでパーソナライズされたダイジェストを受け取ることもできます。

詳細は、こちらのブログをご覧ください。

Compass

Compassは、現代のソフトウェア開発の複雑に相互依存したプロセスやツールから生じるビジネスの俊敏性や生産性の低下、開発者チームにかかる不要なストレスや労力を軽減することを目的とした製品です。分散ソフトウェアアーキテクチャのサービスを信頼できる唯一の情報源として1箇所でトラッキングする、モダンなソフトウェア開発のための管制室のような役割を果たします。ソフトウェア開発チームの負担を軽減する以下3つの要素から構成されています。

  • コンポーネントカタログ:開発者がソフトウェアを組み立てるために使用するすべてのコンポーネントと、そのコンポーネントを所有したり、共同作業をしているチームの情報をマッピングして視覚的に提示します。開発者は、共有コンポーネントやドキュメント、そしてソフトウェアを構築するためのその他の重要な情報に単一の場所からアクセスできます。
  • スコアカード:満たすべきベースラインやセキュリティ、またはコンプライアンス要件に基づいてアーキテクチャを測定および評価できる、DevOpsの健康状態を確認するツールです。
  • アプリ:アプリをインストールするための拡張エンジンで、さまざまな開発者向けSaaSツールの情報を取り込むことで、チームのすべての作業の統制と、作業に最適なツールを選択する柔軟性を提供します。

詳細は、こちらのブログをご覧ください。

アトラシアンプラットフォームの強化

アトラシアンは、3つのソリューション:Agile & DevOps、ITSM、ワークマネージメントに分類される製品群を提供しています。これらすべての製品に共通機能を提供する基盤技術がアトラシアンプラットフォームです。アトラシアンプラットフォームは、製品横断で統一された共通のユーザー体験を提供するエクスペリエンスレイヤー、コンプライアンスやセキュリティ、データレイヤーに関する要件を満たすためのデータ管理レイヤー、マイクロサービスをホストするインフラレイヤー、そしてアトラシアン製品のカスタマイズを可能にする拡張性レイヤーのマルチレイヤーで構成されています。

この1年間に各レイヤーに施された強化や改善を順番に振り返る中で、エクスペリエンスレイヤーに追加された2つの新機能が発表されました。

Atlassian Data Lake

異なるチームがそれぞれに最適なツールを使える反面、複数のツールが存在する際に起こりうる課題が、データや情報のサイロ化です。Atlassian Data Lakeは、全アトラシアン製品を横断したデータを1箇所に集約して格納するデータベースです。これにより、組織を横断した業務に関するエンド・ツー・エンドの生産性を正確に測定することができ、業務がさまざまなフェーズを流れる様子を確認することができるようになります。

Atlassian Analytics

Atlassian Data Lake のデータを視覚化するインターフェースで、昨年アトラシアンが買収したBI技術であるChartioをベースに、全く新しい分析ハブとしてアトラシアンプラットフォームに実装されたものです。標準で美しくインタラクティブなレポートが提供されるダッシュボードがある他、独自のSQL文を使ってカスタムレポートを作成することができます。また、SQL文に精通していない非技術者には、ノーコードでカスタムレポートの作成が可能なビジュアルなインターフェースが用意されています。また、アトラシアン製品だけでなく、他社製品からのデータもあわせて読み込めるため、売上データとサービス開発の進捗を掛け合わせた分析など、新しい知見を得ることができます。

Atlassian Data Lakeのデータへは、Atlassian Analyticsからのアクセスのほか、PowerBIやTableau等の既存BIツールからも可能になる予定です。Atlassian Data LakeおよびAtlassian Analyticsは現在、Atlassian CloudのEnterpriseプランにて早期アクセスをお試しいただけます。

Atlassian Data Lake とAtlassian Analyticsに関する詳細は、こちらのブログをご覧ください。


オープニングキーノートではその他、インフラレイヤーにおけるスケラビリティやパフォーマンスの提供に向けた強化や、データレイヤーでのコンプライアンスやデータのガバナンスに関する強化、日本を含む新しいデータレジデンシーの提供プランなど、アトラシアンクラウドをエンタープライズクラスにするための各種取り組みや、拡張性レイヤーを通してサポートするサードパーティー製品との緊密な連携と独自のカスタムアプリを開発するための開発フレームワークForgeなどが紹介され、アトラシアンプラットフォームは、企業にて活用される多種多様なツールを置き換えることなく、全体として統制の取れたアプリケーション利用体験の中にシームレスにつなげることで、組織の自律性と統制の両輪を可能にし、異なるチームがそれぞれに適した手段を使いながらも協働する新しい働き方を実現できるとして講演が締めくくられました。

オープニングキーノートは登録なしにオンデマンドでご覧いただくことができますので、ぜひ全編を確認してみてください。

Team’22 オープニングキーノート

次回以降は、アトラシアンの各ソリューション柱ごとに行われた基調講演の内容をまとめてみたいと思います。