効果的な製品開発のためのアイデアの優先順位付け
効果的に優先順位を付ける方法を知ることは、プロダクト マネージャーの最も重要なスキルの 1 つです。効果的な優先順位付けは、成功する製品チームの持つ強力な能力です。これにより、製品チームは迅速に行動し、最も影響の大きいアクティビティに集中できます。
しかし、優先順位付けが明確であったり単純であったりすることはめったにありません。プロダクト マネージャーは意図的に考え、慎重に判断する必要があります。差し迫ったビジネス ニーズ、長期戦略、顧客リクエスト、競争、変化する市況など、相反する優先度と考慮事項のバランスを取っています。
反対に、優先順位付けがインサイトに基づいておらず、成果に結びついていない場合、悪夢になりかねません。議論は対立に発展し、合意に達する明確な方法がないまま、直感や声高な意見に基づいて選択が行われます。
RUF: 信頼性、ユーザビリティ、新機能
製品の新機能間の投資のバランスを取り、現在のエクスペリエンスを改善して、信頼性を高めるために製品のエンジニアリング基盤を強化することをお勧めします。
アトラシアンの多くのチームが投資のバランスを取るために使用するフレームワークは、RUF と呼ばれます。
RUF = 信頼性 + ユーザビリティの向上 + 新機能
RUF のフレームワークをピラミッドとして考えてください。
| 信頼性 | ユーザーがアプリに対して最初に期待するのは、「アプリを開くといつでも機能する」ことです。 |
| ユーザビリティの向上 | 製品に取り組む期間が長いほど、その製品に備わる機能が多くなる傾向があります。機能の肥大化は、多くのアプリにとってサイレント キラーです。 |
| 新機能 + アイデア | 強固な基盤が整ったら、新しい機能を追加できます。ここでお話する内容は、周知のとおりです 😉 |
新しいアイデアを優先順位付けするための 3 バケット計画ガイド
新製品のアイデアに関しても、バランスの取れたアプローチで製品を成功に導きましょう。
🛑 現在のユーザー ベースを助けることしかできないリスクがあるため、顧客が求めるすべての機能をただ構築することはできない。
🛑 重要な顧客のニーズを無視する可能性があるため、主要なビジネス メトリック (収益の増加など) の改善だけに集中することはできない。
🛑 信頼性とユーザビリティを危険にさらしてしまうため、新しい革新的なアイデアだけをリリースすることもできない。
Dropbox の元製品および成長担当副社長である Adam Nash 氏は、3 つのバケットを検討することを提案しました (出典:「The 3 bucket planning guide」)。
Jira Product Discovery の 3 バケット機能計画のビュー
- メトリック ムーバーとは、サインアップ、コンバージョン、維持、アクティブ ユーザー、紹介、収益などの主要なメトリックを改善することでビジネス目標に直接貢献する製品イニシアチブです。通常、成長イニシアチブはこのカテゴリに属します。
- 顧客リクエストとは、顧客が求めているものです。まったく新しい機能と現行エクスペリエンスの改善の両方が該当します。顧客リクエストに対応することで、顧客の満足度を維持し、サポートの負担を軽減し、製品が主要な役割を確実に果たすことができます。
- ディライターでは、製品のイノベーションが行われます。これらは顧客自身が要望を認識していなかった機能ですが、働き方を変えることで顧客の生活を向上させることができます。ディライターは、競合他社との差別化を図り、製品を中心とした競争優位性を高めます。
投資全体に予算を配分
こうした各バケットへの投資は、意図的に行うことが重要です。そうしないと、チームが作業時間の 80% をバグ修正に費やすためにベロシティが低下したり、戦略的に考えていないために製品の成長が遅くなったりする可能性があります。出荷する新機能をいくら増やしても、この課題を修正できる可能性はほとんどありません。
各バケットの適切な予算配分は多くの要因に依存します。特に製品開発に関しては、PMF (製品市場への適合) の前後、または成熟した製品によって異なります。
実際には、予算配分は次のようになります。
| | PMF 前 | PMF 後 | 成熟 |
|---|---|---|---|
| 信頼性 | PMF 前 10% | PMF 後 30% | 成熟 50% |
| ユーザビリティの向上 | PMF 前 20% | PMF 後 20% | 成熟 20% |
| 顧客リクエストとディライター | PMF 前 70% | PMF 後 30% | 成熟 10% |
| 成長イニシアチブ | Pre-PMF
| PMF 後 20% | 成熟 20% |
これは変化する可能性があることに留意してください。たとえば、数か月間は新機能へのさらなる投資を決定した後、元に戻って UX の改善や技術的負債への対応に専念する可能性があります。
ただし、配分や再配分を行うときは、製品を成功させるために必要なさまざまな側面を念頭に置き、時間の経過に伴って投資のバランスを取ることが重要です。
こうした投資の管理には、さまざまな方法があります。いずれかのバケットに専念するチームを作ることもできるし、各チームに各バケットから毎回 1 つのイニシアチブを持たせることもできます。あるいは、ラウンド ロビン方式で各チームに各バケットから作業を選ばせることもできます。どのアプローチにもメリットとデメリットがありますが、それはデリバリー計画に関するものなので、ここでは取り上げません。
Jira Product Discovery で投資のバランスを取る
ここでは、6 か月間にわたる Jira Product Discovery チームへの投資配分をどのように構成したかについて説明します。
すべてのスクワッドに投資
価格とパッケージ、成長、やるべき仕事、エンジニアリング イニシアチブという 4 つのメイン テーマがあります。各テーマに対して、多数の投資を行います。
これらの投資は、次の JPD チーム間で分配されます: 5 つの製品スクワッドと 1 つのエンジニアリング スクワッド (Sirius、Horizon、Aurora、Juno、Pulsar、X-flow)。
製品スクワッド
各製品スクワッドは、以下のように時間を配分する必要があります。
- 製品イニシアチブに 60%。2 つのセクションから成るロードマップを作成。1 つは新機能に関するセクション、もう 1 つは現在の製品エクスペリエンスの改善に関するセクション。
- RtB (ビジネスの運営) に 20%。オンコール、バグなど。
- 技術的負債の修正に 20%。
この配分を厳密に強制するわけではありませんが、各チームはスプリント計画と毎月のレビューでこのバランスを保つことについて話し合います。一般的に、これは時間が経っても有効です。
製品イニシアチブについては、ユーザーから受け取ったフィードバックを監視し、プロダクト マネージャー全員と毎週話し合います。フィードバックを特大規模投資の「Boulder (大岩)」と大規模投資の「Rock (岩)」に分けます。
UX における「軽微な問題」を修正する小規模改善である「Pebble (小石)」には、別のリストがあります。大規模投資と特大規模投資への影響は比較できないため、優先順位を付けるのは困難です。しかし、その影響は時間とともに増大します。各スクワッドで常に 1 つの Pebble 修正が進行中であることが期待されます。
エンジニアリング スクワッド
各エンジニアリング スクワッドも同様に分けられます。ただし、製品イニシアチブではなく、システムの回復力とスケールを向上させるための純粋なエンジニアリング プロジェクトに重点を置いています。
優先順位付けに関する生産的な議論を行うための準備を整える
あなたの会社には、自社製品が役に立つビジネス ニーズや顧客ニーズに関するインサイトを持っている人が数多くいます。
この集合知を活用できれば、さらに自信を持って製品の意思決定を下したり、誤った投資をするリスクを軽減したりできます。
ただ、これは口で言うほど簡単なことではありません。製品チームに経営陣や営業チームからの問い合わせが殺到し、「私のリクエストはいつリリースされるの?」という更新リクエストで絶えず中断されるという話を聞いたことがあります。
正しく実行すれば、優先順位付けをチーム スポーツにすることで大きな価値を得られます。優先順位付けを共同で行うことで、ミッション、ビジョン、目的が明確になり、企業全体のチームが共通の目標に向かって取り組むことができます。
優先順位付けを生産的かつ共同で行うために従うべき原則をいくつかご紹介します。
明確な成果物を設定
成果物の設定は、全員が効果的にコラボレーションするために不可欠です。メンバーは、優先順位付けによって実際にどのような結果がもたらされるのか、どのように貢献すべきかを理解する必要があります。
主な要素は次のとおりです。
- 会話における全員の役割と責任
- 共通の目標と成果の測定方法
- 優先順位付けのために指定された語彙と枠組み
- 確立された通信チャンネルとフィードバック ループ
役割と責任を割り当てる
優先順位付けが誰にとってもポジティブな体験となるように、どのように貢献すべきかを明確にする必要があります。
これを後押しするために、作成者、投稿者、関係者という 3 つの役割を中心にした Jira Product Discovery を設計しました。
優先順位付けプロセスに組み込まれた作成者、投稿者、関係者
役割 | 対象 | 責務 |
|---|---|---|
| 作成者 | 対象 製品、エンジニアリング、設計、研究全般を担当する中心的な製品チーム | 責務 製品、優先順位付けプロセス、アイデアを最初から最後まで推進する。 |
| コントリビューター | 対象 営業、サポート、カスタマー サクセス、マーケティング、その他の分野のチーム内での連絡窓口 | 責務 優先順位付けプロセスに参加して、重要なインサイト (顧客のリクエスト、サポートの問題など) を提供する。 |
| ステークホルダー | 対象 会社の残りのメンバー。通常は 2 つの役割 (リーダーとそれ以外) に分かれます。 | 責務 優先度、進捗、決定事項、フィードバックの提供方法を可視化する必要がある。 |
継続的に優先順位をレビューして、改善を重ねる
効果的ではありませんが、よく使用される優先順位付けのタイミングは、年に 1、2 回 (つまり「ビッグバン」アプローチ) です。
このアプローチは、チームが常に変化する要因に適応できないため、機能しません。製品は、市況、新規顧客との会話、予想以上に複雑になる実装などに対応する必要があります。
「大規模な」優先順位付けは、それぞれの決定が非常に大きな影響を与える大きな議論に発展することもあります。これはプレッシャーと期待につながり、優先順位付けに関する議論に緊張感を生む可能性があります。人々は、何か月もその決定の成果に縛られたくないため、間違ったことにリソースを費やす状況に陥ることを心配しています。
代わりに、チームや関係者と頻繁に優先順位付けについて話し合うことをお勧めします。少なくとも 2 週間または 1 か月に 1 回、理想的には毎週少しずつ行うことです。何を学習したのか、現在注力していることによって何か変わるのか、といったことについてです。
これらの議論の場を設けるために製品バックログを構成する
全員がそれぞれの役割を明確に把握し、決定を順調に進めるために、製品バックログを次の方法で構成することをお勧めします。
- 作成者は、Jira Product Discovery プロジェクトを開きます。構成 (フィールド、ビューなど) を設定し、アイデア、ビュー、インサイトを作成して管理します。
- コントリビューターがプロジェクトに追加されます。ただし、コラボレーションは基本的なものに制限されます。投票、インサイト、コメント、リアクションを追加できます。
- 関係者はプロジェクトに追加されません。代わりに、作成者が、関係者と共有する読み取り専用ビューを公開します。
対象者ごとに個別のビューを作成することをお勧めします。
Jira Product Discovery には、さまざまな役割に対して 3 つのビューがあります。
これらの役割固有のビューにより、各グループは、グループに合う方法で必要な情報を確実に得ることができます。製品チームがどのように優先順位を付けているか、どのアイデアが議論されているか、どのように貢献すべきかが一目瞭然です。意見が合わない場合は、生産的な方法でそれを伝える手段があります。
このアプローチは、各対象者が効果的に関わるのに役立ち、あらゆるレベルでのコラボレーションと連携を促進します。
Jira Product Discovery におけるコラボレーションによる優先順位付けの手法
全員が条件を明確に認識すれば、優先順位付けは共有された透明度の高いプロセスになります。これにより、実際の議論に参加できるようになります。
Jira Product Discovery の製品バックログは、優先順位付けを共同作業に変えるのに最適なスペースです。このセクションでは、これらの会話をサポートするように製品バックログを構成するさまざまな方法を共有します。
これらの方法の多くでは、1 から 5 の評価などの数字を使用します。これらは本質的に主観的であり、重要な部分は、数字の背景となる「理由」です。重要なのは、誰もが同じように理解することで、各アイデアの相対的な優先度について容易に議論できるようになるということです。たとえば、「労力が高い」や「影響が低い」と見なされる内容について、全員が同じ認識を持つようにします。
制約の中での思考を促進するために、10 ドル ゲームをする
10 ドル ゲームは、制約を考慮しながら、アイデアの重要性をランク付けさせる魅力的な方法です。
時間とリソースが無限にあれば、製品チームは何でもできます。ただし、実際には、どちらも限られています。そこで 10 ドル ゲームの出番です。プロダクト マネージャーのように考える演習になり、プレイヤーがその仕事がどれほど大変かを理解するのに役立ちます。
Jira Product Discovery の 10 ドル ゲーム。
方法は簡単です。各参加者に 10 ドルの予算が与えられ、参加者は、自分が最も重要だと思うアイデアに「支出」します。1 つのアイデアに好きなだけ投資できます。たとえば、2 つのアイデアに 5 ドル、3 つのアイデアに 3 ドルを投資できます。もちろん、10 ドル以外の予算も使用できます。
次に、参加者は自分の投資の背景となる理由を説明します。特定のアイデアが重要または有望であると考えた理由は何でしょうか。このアプローチにより、積極的な参加と議論が促進され、全員の意見が確実に考慮されます。
優先順位付けサイクルの最初に 10 ドル ゲームを使用してみて、全員の方向性を理解します。または、最後にプレイして、全員の足並みが揃っているかどうかを確認します。
製品チームとエンジニアリング チームの会話で影響と労力のマトリックスを使用する
影響と労力のマトリックスでは、ビジネスへの潜在的な影響と、それを実現するためにかかる労力の両方に基づいて、アイデアに優先順位を付けます。
このマトリックスは、プロダクト マネージャーとエンジニアの間の会話を構造化するためのシンプルかつ効果的な方法です。
エンジニアは、デリバリーの複雑さについての見解を共有するために招待されます。これは、マネージャーが早急な成果や大規模な投資の可能性を見極め、特定のアイデアをその他のアイデアよりも優先する必要がある理由を判断するのに役立ちます。
Jira Product Discovery における影響と労力のマトリックス。
RICE (リーチ、インパクト、信頼度、労力) によって信頼度のレベルを考慮する
RICE フレームワークでは、アイデアに優先順位を付ける際に、リーチ、インパクト、信頼度、労力という 4 つの考慮事項を使用します。これは、これらの重要な要素を、ほとんどの関係者が理解できる方法で構成しているため、人気のある製品管理ツールです。
ほとんどのコントリビューターは、アイデアのインパクト、リーチ、およびその実現にかかる労力を評価することに慣れています。しかし、RICE フレームワークには、会話に信頼度をもたらすという利点があります。
製品チームは、このアイデアが適切な投資であると確信していますか。それとも、確信するには、さらなる調査と製品または技術的な検証が必要でしょうか。
これは、あるアイデアがなぜ成立したのか、またはなぜさらに調査が必要なのかをチームが共有するのに役立ちます。
顧客対応チームに、顧客のニーズに一致するアイデアについてその顧客にタグを付けるよう依頼する
Jira Product Discovery を使用している多くのチームが、このアプローチを選択しています。アイデアのリストを含むビューを構成し、顧客対応チームと共有します。
顧客がいずれかのアイデアに関連するニーズを共有すると、営業/サポート担当は、そのアイデアについて顧客にタグを付けます。次に、タグ付けされた顧客の数に基づいて、各アイデアにスコアを付けることができます。
顧客が重要度の異なるセグメントに分類される場合、製品チームと顧客チームは、異なる顧客に異なる重みを割り当てることが必要になる可能性があります。次の例で、顧客は Enterprise、SMB、スタートアップに分割されています。
これは、製品チームと顧客対応チームの間の生産的な会話を促進するための、シンプルでありながら非常に効果的な方法です。
企業の目的に基づいて、顧客セグメントに重みを使用する。
優先順位付けのために重要な顧客に重みを割り当てる。
さらに凝ったものにする場合 (ただしお勧めはしません)
チームが優先度について話し合うために使用できる方法は他にもたくさんあります。
どちらがニーズに合うかを決めるのはあなた次第ですが、一般的には、方法が簡単であればあるほど、会話も促進されます。
おそらくはやりすぎ: WSJF (重み付けされた最短のジョブが最優先)。
「適切な」優先順位付けモデルを見つけることに執着するチームも存在します。しかし、フレームワークは目的を達成するための手段にすぎません。目的の追求を支援するためのものであり、時間を奪い、注意を惹くことを意図したものではありません。製品を管理しているのであって、優先順位付けのフレームワークを管理しているのではないことを忘れないでください。
自分に合った方法を使用する
結局のところ、これらはすべて単なる提案にすぎません。同じ企業やチームが 2 つとして存在しないように、同じ Jira Product Discovery プロジェクトは 2 つとして存在しません。チャンネルを問わず、これらの方法はすべて、次の内容をバランスの取れたビューで表示することを目的としています。
- ビジネスの目的
- 見込み客が望んでいること
- 顧客とユーザーのニーズ
- サポート チームの負担を軽減する方法
- 営業の会話を可能にする方法
- ビジネスや製品に応じたその他の内容
チーム固有のニーズと製品に基づいて、希望どおりに優先順位を付けるのに役立つ独自のビューの組み合わせを作成することをお勧めします。これに基づいて、何を優先すべきか、「イエス」の内容と「ノー」の内容を決定できるのはあなただけです。
これらの議論から、ロードマップが作成されます。
次にすべきことは何でしょうか?
優先順位付けは、決定を望ましい製品成果につなげる唯一の方法です。効果的な優先順位付けとは、責任を持ってリソースを割り当て、製品チームがビジネス目的の達成と顧客ニーズへの対応に向けて順調に進むようにする強力なロードマップを意味します。
これで、このハンドブックの最後のセクションに進む準備ができました。これまでに学んだことをすべてまとめましょう。
チームと関係者が心から協力できるロードマップを作成する
Jira Product Discovery やその他の製品を使用して、Jira Product Discovery チームでこれを行う方法の例を示します。
フィードバックとインサイト
製品開発プロセスにインサイトを組み込むことで、どのように意思決定を強化し、顧客のニーズに合わせて、成功を促進できるかについてご確認ください。
ロードマップ作成
優先度を調整し、コミュニケーションを強化し、チーム間の戦略的目的をサポートする、影響力のある製品ロードマップを開発する方法についてご確認ください。
