アジャイル プロジェクト管理の環境では、適応性、コラボレーション、反復的な前進が成功の鍵となります。スクラムの哲学とフレームワークは、これらの目標を念頭に置いて開発チームにより作成されました。スクラムは、チームが協力し合って共通の目標に向かって前進するという考えに基づいています。誕生以来、複雑なタスクに取り組み、イノベーションを促進し、価値を提供するためのフレームワークとして広く使われています。
このページでは、スクラム ボードの構造、汎用性、アジャイル チームにもたらす利点について見ていきます。スクラムのフレームワークがどのようにタスク管理を合理化し、チームのコラボレーションと透明性を向上させ、ソフトウェア開発プロセスを柔軟に進める方法を提供するかをご覧ください。
スクラム ボードとは何か
スクラム・ボードは、反復的な作業を目指すチームが、スプリント中または一定期間中の作業を視覚化、追跡、管理できるようにするアジャイル・プロジェクト管理ツールです。スクラム ボードは、明確なコミュニケーション、透明性の高いワークフロー、最適化されたタスク管理を促進する構造をしています。
スクラム・ボードはアジャイルの原則を視覚的に表現しています。ボード上の各カードは、チームがそのスプリントについて優先順位を付けた作業項目です。合わせて、ボード上の列はチームのワークフローを構成します。チームの作業が進行するにつれて、ボード上のカードも進行します。このスプリントについて優先順位付けされなかった他のすべての作業項目は、スクラム・バックログで確認できます。
スクラム ボードの主要コンポーネント
スクラムのアーティファクト
スクラム フレームワークは、アジャイル開発プロセスを通じてチームを導く上で極めて重要な 3 つの中核的な「アーティファクト」を利用しています。これらのアーティファクトは、定義された各スプリント中にチームが行う作業を構造化、視覚化、明確化します。
- 製品バックログ:製品バックログは、開発チームのすべての作業が保存される場所です。製品バックログは、製品を市場に投入するためにチームが達成する必要のあるすべてのタスクの完全なリストです。これには、製品ロードマップの構築、ワイヤーフレームの設計、開発作業の管理、発売計画の作成、およびその間にあるあらゆるものが含まれます。これは製品のライフサイクルにおける作業のスコープ全体を表し、開発のための包括的なロードマップとなります。チームは製品バックログの To Do アイテムを常に見直し、フィードバックや市場の変化に基づいて調整を行います。
- スプリント・バックログ:スプリント・バックログとは、製品バックログに含まれている項目のうち、チームが特定のスプリント内に完了する必要があるものです。スプリント目標の達成に総体的に貢献するすべてのユーザー ストーリー、タスク、作業項目が含まれています。製品バックログと同様に、スプリント・バックログは、スプリントの間に進行中のタスクに行われた改善、追加、完了、調整に応じて進化する生きたドキュメントです。
- スプリント目標(インクリメント):スプリント目標は、チームが事前に設定された期間(通常は 2 週間)の終わりまでに達成する必要のある、具体的な目標を定義します。スプリント目標は、進捗状況を追跡してチームの取り組みを導くのに役立ち、ワークフローが具体的かつ明確な結果に貢献することを保証できます。
スクラムのアーティファクトは、チームと関係者の間の透明性、整合性、効果的なコラボレーションを保証します。作業を計画、実行、実施、レビューするための柔軟な仕組みを提供し、継続的な改善と顧客価値を促進します。
スクラム チーム
スクラム チームは小規模で部門横断型であるべきです。チームは緊密なコラボレーションを行い、特定のスプリント内で重要な作業を完了させる能力を持っています。通常は、次の主要メンバーで構成されており、成功に貢献する固有の役割、目的、責任をそれぞれが持っています。
- 製品所有者: 製品所有者は関係者の希望を製品に反映させる役割を果たします。ソフトウェア開発チームにおいて、製品所有者は、開発チームが製品を改善するための最も関連性の高いタスクに取り組んでいることを確認します。ユーザー ストーリーを定義し、製品バックログに優先順位を付け、要件を明確に理解し、製品の方向性を決定する責任を負います。
- スクラム マスター: スクラム マスターはチームの指導役です。スクラムのフレームワークを伝え、それが理解され実行されていることを確認します。チームにスクラムのベスト プラクティスを教え、会議を円滑に進め、障害に対処し、スクラムの原則を順守していることを確認します。
- スクラム開発チーム:スクラム開発チームは、各スプリント中に製品バックログの項目を出荷可能なインクリメントに変換する責任を負っています。効果的な開発チームは、緊密で、部門横断型で、自己組織化しています。彼らは協力し合って絶えず改善を続け、各スプリントの終わりに高品質な作業を提供します。
スクラム ボードの利点
スクラムには、チームの規模に関係なく、開発プロセスをより効率化するさまざまな利点があります。スクラム ボードの主な利点は次のとおりです。
チームのコラボレーションとコミュニケーションの強化
スクラム ボードは、チームの作業を共有して視覚的に表現するので、メンバーは信頼できる唯一の情報源からコラボレーションしてコミュニケーションをとれます。プロジェクトの関係者全員が、タスク、進捗状況、更新をリアルタイムで確認できます。これにより、チームは最新かつ正確な情報を使用して、計画に対して必要な調整や変更を行えます。
一元化されたフレームワークにより、バックログの整理、毎日のスタンドアップ、スプリント計画を行うときにオープンなコミュニケーションが促進されます。これにより、チーム メンバーはメモを突き合わせることなく、進捗状況、課題、考えられる解決策について話し合えます。チーム メンバーが同じ情報を持つことで、プロジェクトの成功に対する団結感と責任の共有が促進されます。
作業の透明性と可視性の向上
スクラム・ボードを使用すると、チーム全員がすべてのタスク、バックログ、ユーザー・ストーリー、ステータス、その他のカテゴリを把握できます。これにより、チームはスプリントのあらゆるコンポーネントの進捗状況を完全に把握できるため、チームは遅れをとることがありません。
この透明性により、何が起こっているのか、誰が何に取り組んでいるのか、どのタスクが保留中または完了しているのかを誰もが把握できます。スクラム ボードにより可視性が向上したことで、混乱や重複したメールのやり取りが減り、効率的で情報に基づいたコラボレーションが促進されます。
「スクラム ボードは、さまざまな完了状態のタスクが多数あると、見つけにくくなることがあります」と、アトラシアンシアンのシニア・テクニカル・エバンジェリスト、Warren Marusiak は言います。「フィルター、ラベル、Jira の JQL のような詳細検索ツールを使えば、仕事の特定の部分に集中できます。開発者は Jira の「リリース」タブで 1 つの機能に関連するタスクに注目できます」
効率的なタスク管理と優先順位付け
スクラム ボードは、プロジェクトの全体像を提供することで、タスクを効率的に管理するのに役立ちます。タスクをコンポーネントに分解し、タスクに優先順位を付けてチーム メンバーに割り当て、スクラム指標で進捗状況を追跡します。
製品バックログやスプリント計画などのアーティファクトやプロセスにより、重要性と価値に基づいてタスクに優先順位を付けることができます。これにより、チームは最もクリティカルなタスクに最初に取り組むようになり、より効率的なリソースの利用と成果物の作成ができるようになります。また、スクラム・ボードでは各タスクのステータスがリアルタイムで更新されるので、プロジェクトのコンポーネントが見落とされるリスクが軽減されます。
ボトルネックと障害の迅速な特定
スクラムのフレームワークは柔軟で応答性が高くなっています。そのため、状況が突然変化した場合でも、情報に基づいた意思決定と必要な調整をその場で行えます。これは、潜在的なボトルネックや予期しない障害に対処する場合に特に有効です。
たとえば、スクラム ボードには、進行中の作業 (WIP) の制限を組み込めます。これにより、タスクが多すぎてチーム メンバーに過剰な負荷がかかるのを防げます。スクラム ボードでは、リソースを視覚的に確認できるため、チームは新しい作業に着手する前に、進行中の作業を完了することに集中できます。
アジャイル プロジェクトにおける柔軟性と適応性
スクラム ボードは用途が広く、さまざまなプロジェクトやスプリントのシナリオに適合させることができます。スプリントのライフサイクル全体を通じて、優先順位、タスク、要件、リソースの処理能力の変化に対応できます。
市場が変化したり、新しいタスクが現れたり、優先順位が変わったりしても、スクラム ボードを簡単に調整して新しい状況を反映させることができます。この柔軟性は、継続的改善というアジャイルの哲学と一致しています。これにより、チームは厳格に決められた計画に縛られることなく、機敏で適応力を保つことができます。
スクラム ボードとカンバン ボードの違い
スクラム ボードとカンバン ボードはどちらも実用的で視覚的なプロジェクト管理ツールですが、それぞれに異なる利点、スタイル、機能があります。Jira には、ソフトウェア開発を簡素化するためのスクラム テンプレートとカンバン テンプレートが用意されています。また、Jira を使用することで、マーケティング、財務、人事などのビジネス チームは、アジャイル方式を活用できます。ソフトウェア チームとビジネス チーム間で Jira ボードを統合し、組織全体の可視性を高めます。
スクラム ボード
スクラム・ボードはスプリントに焦点を当てており、決まった期間内に行われるタスクを計画、実行、レビューするための明確な構造を提供します。これにより、各スプリントの終わりに段階的な価値がもたらされます。
スクラム・ボードは、明確に定義された役割、構造化された計画、定期的なレビューを利用して、コラボレーションと説明責任を強化します。綿密な計画、段階的なデリバリー、予測可能な結果が必要なプロジェクトには理想的です。スクラム・ボードはさまざまなユースケースで利用できますが、特に、イテレーションにより機能的なソフトウェアが頻繁にリリースされるソフトウェア開発に適しています。
カンバン ボードとは異なり、バックログはスクラム ボードとは別に存在します。スクラム ボードには、スプリント中に完了すると予想される作業項目のみが表示されます。
カンバン ボード
一方、カンバン ボードは、進行中の作業の過負荷を制限しながら、ワークフローを継続的に視覚化して管理することに重点を置いています。スクラムとは異なり、カンバンは時間制限のあるスプリントに縛られない流動的な構造を採用しています。
カンバン ボードはワークフローの列 ([To Do]、[進行中]、[レビュー中]、[ブロック済み]、[完了]) を継続的に視覚化し、スムーズで中断のないワークフローを促進します。また、チームの作業方法に合わせて列をカスタマイズできます。
これにより、優先順位の変化に迅速に対応し、リアルタイムで変更を加えることができるため、適応性が高まり、遅延を最小限に抑えることができます。カンバン ボードは、柔軟性と急速に変化するタスクを管理する能力を必要とする長期プロジェクトに最適です。
カンバンとスクラムの違いについてご確認ください。
スクラム ボードを使用するチームとは
最初にスクラム ボードを作成したのはソフトウェア開発チームですが、ワークフローの合理化、アジャイル プラクティスの採用、プロジェクト管理の強化を目指しているチームであれば、どのチームでもスクラム ボードを使用できます。
スクラム フレームワークの効果を得られる他のチームをいくつかご紹介します。
- IT チームと運用チーム: インフラ管理、システム メンテナンス、運用を担当する IT チームは、スクラム ボードを使ってタスク、機能拡張、インシデント解決を追跡および管理できます。
- マーケティング チーム: マーケティング チームはスクラム ボードを使ってキャンペーン、コンテンツ作成、プロモーション活動を管理できます。マーケティング戦略の計画と実施にも使用できます。
- デザイン チーム: デザイン チームはスクラム ボードを使ってデザイン タスクやワイヤーフレーム、プロトタイプ、ユーザー エクスペリエンス改善を管理できます。また、デザイナーと開発者の間の調整とコミュニケーションの効率を高めることもできます。
- 営業チーム: 営業チームはスクラム ボードを利用して、リード、機会、販売状況を管理できます。スクラム ボードにはセールス パイプラインの概要が明確に表示されるため、チームが潜在的な顧客とのやり取りを管理しやすくなっています。
- 製品チーム: 製品チームはスクラム ボードを使用して、顧客の価値と市場の変化に基づき、製品の機能強化や機能の提供に優先順位を付けられます。
Jira のスクラム ボードであらゆるプロジェクトを管理する
スクラム・フレームワークは、チームがあらゆる製品のライフサイクルを通じて効率的なコラボレーションと段階的なデリバリーを実現する方法を提供します。スクラムがチームやプロジェクトを導くフレームワークだとすれば、Jira スクラム・ボードは進捗を追跡および管理する可視化ツールです。
Jira はもともとアジャイルな働き方を必要とするソフトウェア チーム向けに設計されたものであり、ソフトウェア開発を管理可能なワークフローに細分化するスクラムとカンバンのフレームワークを提供しています。現在では、Jira を使用することで、ビジネス チームもアジャイル原則を利用できます。Jira は何千もの組織のコラボレーションのバックボーンであり、プロジェクトの連携、コミュニケーションの合理化、連携の維持など、すべてのことをソフトウェア チームとビジネス チームが単一のプラットフォーム上でできるようにします。
スクラム フレームワークを最大限に活用したい場合、Jira にはチームの効率を最大化するために必要なさまざまな機能とアジャイル ツールが備わっています。Jira はソフトウェア開発を拡張し、プロジェクト管理を最適化するために、大小の規模を問わずあらゆる企業が必要とするあらゆるものを提供しています。
スクラム ボード: よくある質問
スクラムの原則とは
スクラム原則は、スクラム フレームワークの基本的な指針です。スクラムの 6 つの基本原則は以下のとおりです。
- 経験的プロセス管理: 透明性、検査、適応に根ざしたこの原則は、スクラムの哲学の中心となるものです。
- 自己組織化: オーナーシップと創造性の共有を促すスクラムは、チームの共感を高めることにより、大きな価値を生み出します。
- コラボレーション: プロジェクト管理は、認識、明確化、割り当てを促すことによって価値に焦点を当てたものになります。
- 価値に焦点を当てた優先順位付け: プロジェクト全体を通じ、あらゆる段階で最大のビジネス価値を提供することに重点が置かれています。
- タイムボックス: タイムボックスは、計画と実行を効果的に管理するために不可欠なものです。
- イテレーティブな開発: 継続的な改善手法が、イテレーティブな開発によって迅速に成果を生み出すスクラムの能力をサポートしています。
Jira でスクラム・ボードを作成する方法
Jira でスクラム・ボードを作成する手順は次のとおりです。
- 各自の認証情報で Jira にログインします。
- プロジェクトに移動するか、新しいプロジェクトを作成します。
- ボードを作成して [スクラム] を選択します。
- フィルターを選択して、どの課題をスクラム ボードに表示するかを定義します。
- ボード名を設定し、課題タイプ、ステータス、担当者などに基づいて必要なフィルターを設定します。
- ボードを保管する場所を設定します。
- チームのワークフローに合わせてスクラム ボードの列をカスタマイズします。
- [作成] をクリックし、設定に基づいてスクラム ボードを生成します。
- ユーザー ストーリー、タスク、その他の課題をボードに追加し始めます。
- これで、スクラム ボードを使用する準備が整いました。
スクラム・ボードは長期計画に使用できるか
プロジェクト スプリントの最適化を重視している企業では、短期的な計画と実行を中心にスクラム ボード使用します。長期的な計画やロードマップには、ガント チャートやカンバン ボードのようなツールの方が適している場合もあります。